欧州を11カ国、約40日の旅を終えて日本に帰国し感じた「日本の安さ」について

2022年の3月27日から5月7日まで僕は東欧諸国を旅した。

目的はウクライナで起こっている戦争を取材することだった。
しかしながらこの目的はある事情により叶わなかった。

叶わなかったからすぐに日本に帰るという選択肢は僕の中にはなく、せっかく東欧に来たのだから色んな国を見ておこうと思い東欧諸国周遊を始めた。

ハンガリーから入り、ウクライナ、スロバキア、チェコ、オーストリア、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、ノルウェー、ドイツ。
旅した順番に多少前後はあるが、主にこのようなルートで旅を進めた。
まず旅する中で感じた日本の良さは日本食の美味さ。
欧州は基本的にパン、サンドイッチ、パスタ、ピザなので日本の食事が特に恋しく感じた。

欧州を旅する中で日本食のよさ、サービスの良さ、お客さんに対する丁寧さなどは際立っていると実感した。

ただその素晴らしいサービスを提供しているのにも関わらず、物の値段(特に食べ物)が安すぎるということに驚かされた。
日本に帰国後スーパーマーケット、そこら辺にある飲食店、コンビニの値段を見ても本当にここは先進国なのだろうかというかという疑問が頭から離れなかった。

旅をする前、僕が日本にいた時にはコンビニのお弁当などが高く感じていた。
おにぎりやサンドイッチも価格面からそこまで頻繁に手を出すような物ではなかった。

しかし欧州の旅から帰ってくると、そのどれもが3割増しぐらいに安く感じた。
成田空港について吉野家で牛丼を夜ご飯として頼んだが、なんと破格の500円ほどの値段で食べられるということに衝撃を受けた。

欧州(東欧でさえ)では1食1000円以上かかるのが当たり前だったので、なんでこの価格で食べられるのだろうかと考えながら口を動かせていた。

もしかするとアジアという地域は全体的に食の価格が安いということも関係しているのかもしれないとも思った。
東南アジアに行けば屋台で安く食べられるし、インドなども格安の路上屋台が発展しているという。
日本も食文化がアジアなので、必然的に食の価格が抑えられているのだろうかと思ったりもした。

しかしながらよくよく考えてみても、1食1000円未満で食べられるのは、サービス料などを合わせたとしても安すぎる。
食が安いということは従業員の賃金も安いからということだろう。

食の面だけではなく、物の値段が全体的に安いと感じた。
給料が安いから物価も安いのか、物価が安いから給料が安いのか。

確かに日本の中で、日本人を相手に日本円を使って商売をしている分には大きな問題はないだろう。
給料は上がらず、物価も上がらずなのでそのままいい具合に暮らしていける。

しかしながらこれから日本人が外国を見た時に状況はかなり違ってくる。
海外旅行に行きたいと持っても気軽にいける状況ではなくなってくる。

なぜなら海外は物価が上がり、賃金も上がり続けている。
世界の物価が上がっていく中で、日本の物価水準だけがこのまま停滞していたらどうなるだろうか。
日本はここ30年間ずっと横ばいのままで成長していない。
他国の物価と賃金が上がっているのに日本だけ横ばいだから、高く感じるのは当然である。

ヨーロッパの国々を旅する中でその空気をひしひしと感じた。
物価が安いと言われている東欧諸国に旅をしてもそこまで安さを感じないのだ。日本と同等か、それより少し上。格安のドミトリーに泊まれば、宿代は日本の半分ぐらいで泊まれるといった感じだ。

それ以外は全く物価の安さを感じなかった。

東欧諸国でこうなのだから、西欧諸国や北欧はどうなのだろうと思っていたが、案の定べらぼうに高かった。

ノルウェーのオスロは目ん玉が飛び出るくらい物の値段が高く、日本円で計算するととても何かを買うという気持ちになれなかった。

ドイツのベルリンにも少し立ち寄ったが、路面電車のチケットが一枚6ユーロ850円ほどと、とてもじゃないが気軽に足として使うのは無理そうだった。たったの一駅でもその値段がかかるのである。
仕方がないのでチケット代は節約してなるべく歩いて街を歩くようにしていた。

帰りの飛行機で偶然隣同士になった日本人男性はロンドンに滞在していたらしく、彼もロンドンの物価の高さを開口一番に上げた。
朝食が日本円で3000円以上、夕食を食べると7000円という価格に驚いていた。
そして彼はあんなところには住めた物ではないといっていた。

ロンドン、ノルウェー、ドイツは世界的に見ても物価の高い国だが、ここまでの値段になると一般日本人には到底気軽に旅ができた物では無い。
一食するだけで日本で食べる何倍ものお金が吹っ飛んでいくのだから。

そしておそらく多くの国がこのように物価が上がっていく。ノルウェーとまでは行かなくとも、これに迫る水準で近くの国々は物価が上がっていくのが予想できる。

そうなった時に日本だけが停滞していては海外旅行などは夢のまた夢の話になってしまう。
今の東南アジアの国々が他国の物価が高いせいでなかなか海外に行けないように、日本もこのままではそう遠く無い将来にそこのレベルまで落ちてしまうのではないか。

僕はそれを心配している。

日本の中でいい、海外なんか行きたくないという人たちにとってはそれでいいのかもしれない。

しかしながら僕のように海外思考が強い人たちににとってはこの日本の停滞、海外の物価の上昇はかなり問題なのである。あと何年か後には物価の問題で気軽に海外に行けなくなるのでは無いかという事を今回の旅を通して深く実感した。

日本の物価を高くし、そのためには賃金、給料を上げていかなければと思うようになった。

2015年に日本を出てからというものアメリカに留学し、その間南米や東南アジアなどを主に旅をしてきたがその時はそこまで日本の弱さを実感することは少なかったと思う。

しかしながらコロナによるパンデミックが明け、再び世界に出てみると物価の安さがより一層際立ったように感じる。

また旅中に何人かの日本人と会ったのだが、彼らも例外なく物価が思った以上に高いという事を嘆いていた。

日本はこのままでいいのだろうか?

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